砂糖が乳がんを進行させる
<砂糖の摂取量に注意を。進行だけでなく、肺などへの転移リスクも..>
乳がんの発がん、増殖について、以前この欄でも触れたように、27Hコレステロールや牛乳中の女性ホルモン、ウシ白血病ウイルスなどが関連していることが報告されていますが、動物実験で砂糖が乳がんを進行させ、肺転移を増加させることが判明しました(Cancer Research 2016.1.1)。
2種類のマウスに2種類の腫瘍を移植する実験で、与える食事をショ糖なし(対照群)、ショ糖125g/kg、ショ糖250g/kg、ショ糖500g/kgの4群に分けたところ、6か月後には対照群で30%のマウスに乳腺腫瘍が形成されましたが、ショ糖群では各々50%、58%、50%に形成されました。ショ糖250g/kg群は対照群より腫瘍平均重量が50mg多く、病理的にも対照群では弱い過形成だけであったのに比較して、500g/kg群では3カ月で早くも腺腫形成が認められました。別の腫瘍細胞を使った実験では250g/kg群で対照群より有意に肺転移が多く、平均腫瘍細胞も2倍近くありました。
さらにこれらの群の乳腺腫瘍内の12-LOX(12-リポキシゲナーゼ)の代謝産物である12-HETE濃度は、ショ糖250g/kg群で対照群の2・6倍と高値でした。これらから、ショ糖は乳がんの増殖、肺転移に影響しており、その原因は12-LOXとその代謝産物の12-HETEという脂肪酸の発現増加が関連していると考えられました。さらに、実験を進めてフルクトース(果糖)が含まれる糖の時に乳がんが増殖することが突き止められました。
日本人の砂糖摂取量は、2013年の農林水産省の統計で1日69g、1人あたり年間25.2kgです。米国の1日100gには及びませんが、砂糖入り飲料の摂取増加が、肥満、心疾患、がんの増加の重要な因子といわれています。乳がん患者を含め、砂糖は適度な摂取が肝要のようです。