医療法人社団 北つむぎ会 さっぽろ麻生乳腺甲状腺クリニック [北海道札幌市]

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院長のよもやま話

体脂肪が多いと乳がんリスクが高まる

更新日:2021年05月21日

<脂肪量の多い女性と少ない女性を比較した乳がんリスクが発表されました>

閉経後の肥満は乳がんリスクであることは広く知られていますが、最近、肥満とされない閉経後の女性でも体脂肪が多いと浸潤性乳がんになりやすいとの報告がありました(JAMA Oncology 2018・12)。

この報告によると、50〜79歳の閉経後女性3460人を平均で16年追跡したところ、全体脂肪が18・7㎏以下の群と比較して25・1㎏より多い群では浸潤性乳がんリスクが1・89倍となりました。全体脂肪率では、33・7%未満の群と比較して、41・3%より多い群では1・79倍でした。体幹脂肪では7・3㎏以下の群と比較して、11・4㎏より多い群では1・88倍でした。

さらに、浸潤性乳がんでもER(エストロゲン受容体)陽性乳がんに限ると全体脂肪が18・7㎏以下の群と比較して25・1㎏より多い群ではリスクが2・21倍でした。同様に全体脂肪率では2・17倍、体幹脂肪では1・98倍でした。BMI(BodyMass Index)が18・5から24・9の標準体重であっても、体脂肪が多いと浸潤性乳がんリスクが2倍近くになるということです。

なぜ、体脂肪が多いと乳がんリスクが高くなるのでしょうか。今回の報告では、①乳腺内の過剰な脂肪組織が炎症を起こし、NF-kBという転写因子を活性化してアロマターゼを上昇させERを増加させる、②インスリンはIGF-1を誘導しエストロゲンを活性化する、③腫大した脂肪から産生されるレプチンがアロマターゼを誘導する、などの理由をあげています。

普及している体脂肪計は生体インピーダンス法を用いており、結果のばらつきが大きいのですが、継続して体脂肪を測定して自分の体脂肪率を把握しておいてはいかがでしょうか。

■オントナ 2019 年1 月30 日付 修正稿