医療法人社団 北つむぎ会 さっぽろ麻生乳腺甲状腺クリニック [北海道札幌市]

北海道札幌市北区北38条西8丁目2-3

院長のよもやま話

朝型人間は乳癌になりにくい

更新日:2021年05月21日

2007年にWHOの国際がん研究機関(IARC)がシフト勤務を含む概日リズム(体内時計)の乱れは乳がんなどの発がん性をもたらすと報告しました(Lancet Oncol 2007)。また、He Chunlaらは28の研究をメタ(統合)解析して、概日リズムの乱れと乳がんの間に有意な正の相関を認めました(Int Arch Occup Environ Health 2014) 。しかし、これらの研究で睡眠特性(朝型人間、夜型人間)や不眠症と乳がんリスクの研究は少数でした。

今回、Richmond RCらはメンデル無作為化を用いた研究で、朝型人間は乳がんと逆相関することを示しました(BMJ 2019.6)。 英国バイオバンクに登録された156、868人(乳がん7,784人)の多変量Cox回帰分析では「明かな夜型」、「朝型よりは夜型」、「わからない」、「夜型よりは朝型」、「明かな朝型」の5つのカテゴリーに分けると、それぞれの段階ごとに乳がんは5%づつ減少しました。また、睡眠特性と関連する一塩基多型(SNP)を用いた英国バイオバンクと乳がん協会コンソーシアム(BCAC)の乳がん症例122,977人と対照105,974人を合わせた2サンプル・メンデル無作為化研究ではカテゴリーごとに12%の乳がん保護効果が認められました。

また、この研究では2サンプル・メンデル無作為化研究で睡眠時間が1時間長くなる毎に(7時間以上)、乳がんリスクが19%増加することも分かりました。これはエストロゲン受容体陽性・陰性に関わらず増加しました。一方、不眠症症状と乳がんリスクの関連は明かではありませんでした。

概日リズム(体内時計)の研究はその分子機構の解析が進み、多くの時計遺伝子が見つかっています。できるだけ朝起きたら日光にあたり、朝食を必ず取ることで体内時計をリセットしましょう。朝型の生活、寝過ぎないことが乳がんリスクを下げるこつのようです。