医療法人社団 北つむぎ会 さっぽろ麻生乳腺甲状腺クリニック [北海道札幌市]

北海道札幌市北区北38条西8丁目2-3

院長のよもやま話

ふたたび「たばこと乳がん」

更新日:2021年05月21日

国立がん研究センターは平成29年9月20日に最新がん統計を発表しました。これによると平成25年(2013年)のがん罹患数は乳がんがトップで累積罹患リスクは9%、11人に1人が生涯で乳がんに罹患するだろうと予測しました。平成27年(2015年)のがん死亡数では乳がんは女性の5位でした。乳がんの罹患数は戦後明らかに上昇し、米国の8人に1人に迫っています。

その原因として食生活の西洋化(高カロリー、高脂肪食)があると思われますが、直接証明した研究はありません。エストロゲン(卵胞ホルモン)の長期曝露(初経が11歳以下、閉経が55歳以上、未妊、初産が遅い、授乳なしなど)や閉経後の肥満、乳がん家族歴、遺伝性などは乳がんの原因となることが疫学的に証明されています。

喫煙はどうでしょう。平成25年8月に国立がんセンターは「がんのリスク・予防要因」を改定し、喫煙は乳がんの原因となる「可能性あり」とされました。

道産子はたばこ好きで、平成25年度の20歳以上の喫煙率は女性が全国第1位で17.8%(全国平均10.7%)、男性は第3位で39.2%(全国平均33.7%)となっています(国民生活基礎調査)。これは旧「樺太」でも喫煙率が相当高かったことから、寒冷地での開拓、植民地で政策的に煙草が配給されたことと関連する可能性もあります。この名残と言うことでしょうか。しかし今回のがん研究センターの発表で北海道の肺癌死亡率はダントツで男女とも1位でした。不名誉な1位ですね。

厚生労働省研究班の調査では、閉経前女性では喫煙により、乳がんリスクが3.9倍に、受動喫煙でも2.6倍になるという結論でした(Int. J. Cancer.2005)。道民はただちに禁煙に取り組む必要があります。禁煙によって多くのがんから救われる可能性があるのです。受動喫煙でも乳がんの危険性が2.6倍になると言うことは、喫煙により配偶者や友人を不幸に陥れていることになります。喫煙者の猛省を促したいと思います。また、厚労省が出したり引っ込めたりしてる「飲食店での完全禁煙」の早期法定化を望んでいます。