ホルモン避妊法と乳がんのリスク
<ホルモン避妊法の使用期間が長いほどリスクが増すという結果が>
現在わが国では11人に1人が乳がんを発症しており、乳がんリスクを上昇させる因子の研究は重要です。ピルなどのホルモンによる避妊法が乳がんと関係あるかどうかは諸説あり、はっきりとはしていませんでした。最近デンマークからビッグデータを用いた研究報告がありました(NEJM2017・12)。
14歳から49歳のすべてを対象とした前向きコホート研究で、ホルモン避妊法の使用と浸潤性乳がんの関連を評価したものです。女性180万人を10・9年間追跡した信頼のおける研究と言えます。
この間発生した浸潤性乳がんは1万1517例でホルモン避妊法の使用歴のない女性と比較して、ホルモン避妊法を現在使用している、または最近まで使用していた女性の乳がん相対リスクは全例では1・20。つまり20%増加していました。使用期間が1年未満では相対リスクは1・09で、10年以上使用すると1・38にリスクは上昇しました。ホルモン避妊法中止後も使用期間が5年以上の女性で乳がんリスクは高まりました。逆に5年未満の女性の乳がんリスクは急速に低下しました。各種のホルモン避妊薬の種類、子宮内器具の使用に関わらず、乳がんリスクは同様の上昇を示しました。
なんらかのホルモン避妊薬を現在使用している、または最近まで使用していた女性の乳がんの診断の絶対値での全体的な増加は、10万人で年あたり13例で、7690人がホルモン避妊法を1年間使用するごとに乳がんが約1例増加する計算になります。ただし、サブグループ解析では35歳未満では10万人で年あたり2人と全体での5分の1以下と少なくなっています。
ホルモン避妊薬は効果的な避妊手段で、月経困難症や月経過多の女性に有益であり、また、経口避妊薬がその後の卵巣がん、子宮体部がん、大腸がんのリスクを大幅に減少させるという報告もあります。ホルモン避妊薬の使用は乳がんリスクのみで制限されるべきではありません。
今回の報告から、40歳以上でホルモン避妊薬を現在使用している、または最近まで使用していた女性は定期的に乳がん検診を受けることをお勧めします。