飲酒と乳がん
更新日:2021年05月21日
国立がん研究センターの2021年2月更新の最新がん統計によると平成29年(2017年)のがん罹患数は乳がんがトップで累積罹患リスクは10.6%、9人に1人が生涯で乳がんに罹患するだろうと予測しました。もはや乳がん罹患率は欧米に肩を並べました。
乳がんになりやすい因子の1つとして飲酒が知られています。欧米では閉経に関わらずアルコール飲酒量50g/日以上では非飲酒と比較して1.6倍乳がんになりやすい(Bagnardi Vら, Br J Cancer 2015)ことが報告されていました。
このたび、愛知がんセンターと国立がん研究センターの大規模な共同医研究により、日本人における飲酒と乳がんに関する興味ある結果が報告されました(Int J Cancer 2021.1)。8つの大規模コホート研究を統合した158,164人のプール解析で、閉経前乳がんにおいて、飲酒量が23g以上の群では非飲酒群に比べて1.74倍乳がん罹患リスクが高くなりました。飲酒頻度では最も頻度の高い群では非飲酒群に比べて1.37倍でした。閉経後乳がんでは飲酒量、飲酒頻度とも乳がんリスクとの有意な関連はありませんでした。これについて研究では、閉経後女性の飲酒習慣の割合が少なく、飲酒の影響が小さく見積もられた可能性や、日本人では閉経後肥満が少なく、脂肪細胞由来のエストロゲンを介する影響が欧米女性より少ない可能性を考察しています。
閉経前乳がんでは飲酒に注意が必要です。閉経後であっても肥満傾向のある方は同様に注意が必要と思います。お酒の好きな方はどうぞ気を付けて。